八張槐が姿を消してすぐに、清人が率いる13課が現場に到着した。現場保存をしてキャリーケースを押収していった。
直桜の様子がおかしいことに気が付いた清人が車を運転してくれて、隣にずっと護がいてくれたことは、覚えている。マンションに着いてからは護に部屋に戻された。清人と護は事務所で何か話し込んでいるようだった。
真っ暗な部屋で天井を見詰めながら、直桜は歯を食い縛った。
『お前は結局、集落に過保護に愛情を注がれた特別な生神様だよ。俺には永遠に勝てない、あの頃のままだ』
槐の言葉が頭の中で延々繰り返される。
(悔しい……。悔しくて、悔しくて、頭バグりそうだ)
伸びてきた槐の手から逃げるように引いてしまった体も、神殺しの鬼の話を振られて完全に怯えた心も。
何より直桜の心にこびり付いて離れないのは。
『初めての相手にそんなこと言うの? つれないなぁ』
『体の相性は良かったのに? いつも悦さそうにしてたじゃないか』
直桜に聞かせるためにわざと盛って話していることくらい、わかっている。それでも、槐が護の最初の相手だった事実は、きっと変わりがない。
(全部、俺の気持ちを搔き乱すためだ。俺がどんな顔をするのか、楽しんでいるだけだ)
わかっているのに、槐の期待通りの反応をしてしまった自分自身に腹が立って仕方がない。
(護は全然気にしてない感じだったじゃないか。俺が気にしてどうすんだよ。それよりもっと、考えなきゃならないことが、あるだろ)
神殺しの鬼について、直桜には最低限の知識しかない。護も槐も、もっと突っ込んだ意味を知っている様子だった。
(俺が一番知らなきゃいけないのは、それだろう。ちゃんと、聞か